【施主様インタビュー】東京と八ヶ岳南麓の二拠点居住。東京で仕事をして、月の1/4を八ヶ岳で暮らす

【施主様インタビュー】東京と八ヶ岳南麓の二拠点居住。東京で仕事をして、月の1/4を八ヶ岳で暮らす

DATA

  • 所在地:山梨県北杜市
  • 構造:木造2階建て
  • 設計施工:木村工務店
  • 完成:2023年

「一ヶ月いないと、生き物がガラッと変わるんですよ」

庭の池を眺めながら、そう教えてくれたのは、東京で不動産業を営むYさん。夏までたくさんいたゲンゴロウが、次に来たら忽然と消えた。そんな変化を楽しそうに話してくれました。

2年前に、北杜市、八ヶ岳南麓に新築を建築して始めた二拠点生活。Yさんが、なぜこの地を選び、どのように家づくりにこだわったか、お聞きしました。

東京と八ヶ岳の二拠点居住。八ヶ岳に建てようと思ったきっかけは?

Yさんは東京でのお仕事と両立させる形で、月の4分の1をこのセカンドハウスで過ごします。

もともと生き物好きでアウトドア好きだったYさんにとって、自然の中で暮らすことは、たっての希望でした。ゲンゴロウの池も「水生昆虫や水辺に集まる場を作って、何もしないで放置したら、どんな虫が来るのかな?」という興味から。新築後、まずはじめに庭に池を作ったそうです。

40年近く登山を続け、八ヶ岳の縦走も何度も経験したYさんにとって、八ヶ岳はとくに愛着を感じていた場所でした。

当初は原村での土地探しを始めましたが、なかなか縁がなく、やがて八ヶ岳南麓へと視野を広げることに。「結果的にはこちらの方が良かった」と振り返ります。

「東京からの距離を考えると、原村よりも20キロほど手前にある現在の場所の方が、東京からの往復の疲労度も少ないですね。一泊で来ることを考えると、この距離感がちょうどよかったと結果的には思います」

寒さについても、「原村だったら寒さがまた一段違う。夏はいいんだろうけど、冬をどう過ごすかを考えたら、北杜市寄りの八ヶ岳南麓が現実的だった」とのこと。

大月方面など東京からもっと近い選択肢もありましたが、そこは「やっぱり八ヶ岳が好きだったから」と一言。「八ヶ岳」は譲れない一線でした。

土地探しについて〜畑だった土地をうまく活用

不動産業のプロであるYさん。「こっちの土地のことは分からないので、やはり地元の不動産屋にお願いするのが一番だろう」と、土地探しはホームページで見つけた地元の不動産会社に相談することにしました。最初に気になった土地とは別のこの土地を紹介され、現地を見て回って検討した末に、ここに決めました。

もともと畑だったこの土地をすべて宅地化してしまうことには抵抗があり、畑のまま活かせる部分を残すことに。実際に作物を作ってみると、やはり最高な土地で、ジャガイモ、サツマイモ、ブルーベリー、プルーンなどを「ほったらかし」で収穫できたそうです。

「2、 3年でだんだん学んできて、ほったらかしでちゃんと育つ作物と、やっぱり育たない作物があるのが分かってきました」

工務店も地元に依頼したかった

「地元の工務店さんに建ててもらうのがいいだろうと思い、土地探しからお世話になっていた不動産屋さんに何社か紹介してもらいました」

こうして、北杜市長坂にある当社に設計・施工を依頼いただくことになりました。ご自身が不動産業を営まれているからこそ、「知らない土地で家を建てるなら、その土地を知る地元の工務店に」という判断に、プロならではの説得力がありました。

気に入っているところは「アウトドアキッチン」と「こだわりの漆喰壁」

「一番気に入っているところは、このアウトドアキッチンです」

デッキに設けられた特注のアウトドアキッチンは、シンクと作業台を備え、専用のタープを張れば、雨の日でも濡れずに料理ができる格好です。

「汚し放題なんですよ。油物とかもガンガンできますし」

室内のキッチンを汚さずに本格的な調理ができるから、来客にも喜ばれるそう。焚き火台で焚き火も楽しめ、まさに「男の憧れ」を存分に満たしてくれる場所です。

室内でこだわったのは「漆喰壁」。普通の漆喰ではなく、桜島の噴火による火山灰を原料とした高千穂シラスの漆喰を採用しました。「東京の住宅フェアでたまたま見つけて、サンプルを取り寄せて」、素材の良さを気に入って家の壁に採用しました。

珪藻土などと同様、湿気や臭いを吸収する効果に優れている漆喰。質感も滑らかで、モダンな内装によく合う白が、家全体の雰囲気を格上げしています。

暖房は床暖房とペレットストーブの併用。薪ストーブではなくペレットストーブを選んだのは「薪の大変さを色々聞いていた」ため。

「将来的に年齢を重ねることも考え、袋入りのペレットを買ってくるだけで済むペレットストーブを選びました。一見薪っぽいでしょ? なんちゃって薪ですけど」

ペレットは1袋で約1日半持ち、日中は床暖房と併用すれば真冬でも十分暖かいとのこと。

冬の凍結防止はこの地域では必須ですが、床暖を最低レベルでつけて帰ることで配管の凍結を防げます。本来、水抜きで凍結防止できますが、電力のおよそ半分を太陽光発電でまかなえる床暖の方が手軽なんだそうです。

二階の書斎には、栗の一枚板のカウンターを設置。ここからは富士山が見え、星空観察にも最適です。

V2Hシステム

もう一つの大きなこだわりが、V2H(Vehicle to Home)システムを導入した点です。太陽光発電パネルに加え、電気自動車を蓄電池として活用できるこのシステムです。

「今はプラグインハイブリッド車ですが、次は完全な電気自動車に買い替える予定です。そうすると、日中は太陽光で発電して、夜はV2Hで車から給電できるので、実質、電気の自給自足ができるようになって、電力会社からほぼ電気を買わなくてすむのかなと思ってます」

二拠点生活で「仕事」や「暮らし」が豊かに

水生昆虫などの観察を楽しみに作った池は、当初はシートを破れて水が抜けるトラブルもありました。原因は、鹿が水を飲みに来て落ちたためだろうと推測し、より強固なシートに張り替えました。

池の生態系は常に変化していることを発見し、将来はさらに本格的なビオトープを整備することも検討中。

そんな自然に触れる二拠点生活は、仕事のやり方に変化をもたらしたといいます。

「自営業なので、仕事の調整はしやすい方でしたが、最初は大変でした。契約などを入れないよう調整し、従業員に任せる仕事をこっちに来る前に整理する必要があったので。東京に戻って1〜3日が一番疲れてました。でも、頭をより働かせて効率よく仕事を進めないとこっちに来れないので、慣れてくると、それがかえって良い刺激になりました。定休日と週末を組み合わせて、うまく時間を捻出することを続けていたから、自身のマネジメント能力が身についてきた気がします」

「こっちに来るとき、ワクワクする」のは、池の生き物の変化、畑の作物の成長、季節ごとに表情を変える自然の景色・・・東京では味わえない楽しみがあるからですね。

一方、夏は雑草との戦いで「げんなりする」ことも。しばらく留守にすると、砂利の隙間からも雑草が生えて、暑い中での草取り作業に「何しに来てるのかな」と思うこともあるそうです。そのため、庭の管理はある程度は造園業者に任せることにしました。

「こういう生活を続ける間は、その辺はある程度任せないと難しいかなと思います」

想定外のトラブル、キツツキ被害

想定外のトラブルもありました。キツツキによる被害です。軒裏の羽目板に何カ所か穴を開けられてしまいました。

「木の外壁をやられるとは聞いていたので、気にしていましたが、外壁はやられなかったんですよね。まさか軒裏にやられるとは思っていなかったです」

近隣でも被害が増えているようで、「キツツキが好む木が減ってきているからかも」とYさんは推測します。人家は穴を簡単に空けられるため、格好の営巣場所になってしまうのかもしれませんね。

ちょうど取材時は、キツツキ被害の修繕中で、足場が組まれていました。

定住を見据えて

現在は東京と山梨の二拠点生活ですが、将来的には完全移住を考えています。そのための準備は、すでに家の設計段階から織り込まれていました。

たとえば、1階だけで生活が完結する間取り、メンテナンスの少ないペレットストーブ、バリアフリーを意識した動線。年齢を重ねても快適に暮らせる工夫が随所に施されています。

共働きの奥様とは休みが合わないため今は別々に山梨に来ることが多いそうですが、それも奥様の退職予定を機に変わっていく予定だそうです。「彼女が来る時は小淵沢まで迎えに行って、一緒に帰れる」と話すYさん。近い将来の暮らしの変化を見据えています。

東京で仕事があっても、まずは二拠点居住で住みたいところへ踏み出してみる。Yさんのセカンドハウスは単なる別荘ではなく、新しい暮らしへ踏み出すための足がかり、これからの人生を見つめるベースでした。

「今は都会に住んでいるけれど、いつかは自然に囲まれた土地で暮らしたい」そんなことを思い描いている方にとっては、Yさんの選択は大きなヒントになりそうです。