【施主様インタビュー】八ヶ岳西麓に別荘を購入してリフォーム。東京から原村へ移住されたご夫婦

長年東京で暮らしてきたAさんご夫妻が、長野県・原村に築40年の中古別荘を購入したのは、コロナ禍が明けてしばらく経った頃。
最初の夏は、手を加えずそのままの状態で過ごし、翌年、地元の工務店にリフォームを依頼。リフォーム後は、生活の拠点を東京からここ原村へ移し、新しい暮らしを始めました。
リフォームした工務店:木村工務店株式会社(山梨県北杜市)

「もともとあったもの」を活かした
玄関を開けると、白壁の明るい空間が広がります。ペットがいるので、玄関は広い方が便利。もともと狭かった玄関を広げ、仕切り壁を置くことで、ペットグッズを来客の視線から隠れる格好で収納できるようにしました。

この壁の後ろに家主の靴やペットグッズの収納スペースがある
「玄関にいろいろぶら下がってるより、これの方がいいですよね。木村さんが提案してくれました」(ご主人)
壁は漆喰のようなマットな質感の白を選択。
「石膏ボードに塗料を塗ってもらったので、将来ひび割れますよ、とは言われました。でも、漆喰のような質感が気に入ったのと、リーズナブルだったので、これにしました」(ご主人)
もともと漆喰壁に興味があったというご主人。実際、寝室や和室の壁はDIYで漆喰で塗り直しました。見せていただくと、とても綺麗な仕上りでした。「左官屋さんに教えてもらったんですか?」と訊くと、インターネットや動画で学んだ、とのこと。養生をし、シーラーを塗って、『塗るだけタイプの漆喰』の二度塗りで仕上げたそうです。
「コテの使い方がだいぶ上手くなりました(笑)。湿気とカビ臭さも取れたので、漆喰壁にしてよかったです」(ご主人)

もともとこの家には味のある古いランプがいくつかあったそうです。
「買ったときにお家がとても綺麗な状態だったんです。前の家主さんが大切にされてたんだなって伝わってきて。トイレの照明ひとつとっても可愛らしくて。それを活かしたいな、と木村さんに伝えたら、ランプを磨き直してくれて、いろんな所にうまく使ってくれたんです」(奥様)
「細かいところまで言っていないのに、一番最初に出してくれた案がすごく良くて」
ほかにも、築40年の家には、お二人が「これは残したい」「そのまま使いたい」と感じるものがたくさんありました。
「工務店選びってやっぱり出会いのようなものなんですかね。私たちが何を求めているのかを受け止めてくれて、すぐ伝わるというか、言葉以外の部分でも、なにか通じ合っているような感じがしました。施工が始まってからも、状況に応じて私たちの希望をまず優先してくれて。それで費用が大きく膨らむこともありませんでした」(ご主人)

天井裏にかっこいい梁が隠れていた。これは見せることに
打ち合わせは月に一度ほど。それでも上がってくる案に、ほとんど修正はいらなかったといいます。
「細かいところまで何も言っていないのに、一番最初に出してくれた案がすごく良くて。間取りも、なんでわかるの? という感じだったんです」(奥様)
原村は長野県。木村工務店は山梨県。県をまたぐ不安はなかったか尋ねると、「とくになかった。どの県かというよりは、この気候での施工実績があったから安心だった」とのこと。
薪ストーブやキッチン、リビングの棚〜「こだわり」を実現
リフォームを考え始めた当初から決めていたのが薪ストーブ。メーカーまで決めていました。とある有名な手づくりストーブの商品です。
しかし、実際に問い合わせてみると、入手に時間がかかることがわかり、泣く泣く断念することに。
「それで木村さんに相談したら、同じ予算でもっといいものを見つけてくれたんです」(ご主人)

「オーブン付きなんです。キャベツとかお芋とか、買ってきたピザも、入れておくだけですごくおいしくなります」(奥様)
標高が高く冬の寒さも厳しい原村では、大きめのストーブでないと家全体は暖まらないと聞きますが、このサイズのストーブなら不安はないですね。

床は全面、杉のフローリングに張り替えました。決め手は、16歳になる愛犬・マールちゃん。硬い床だと滑ってしまうので柔らかい杉にしました。

システムキッチンや浴室は、東京のショールームに足を運び、お二人で好きなものを選びました。

リビングの壁面を彩る棚は、奥様の手描きの原案をもとに工務店が造作したものです。奥様は長年イラストの仕事に携わり、絵本を出版した経験もお持ちです。
「元イラストレーターとは思えない、すごく下手な絵を描いたんですけど(笑)。そうしたら、すぐにその通りに作ってくれて」(奥様)
東京のお住まいにも壁一面の棚があり、それが気に入っていたそう。その使い心地と、おそらく居心地も、このお家に移しました。

この地に決めたきっかけは、土偶⁉
お二人がここ原村に決めた理由は意外なものでした。
「景色や空気の良さもありますが、土偶のおかげでこっちに来ました」と奥様。
「尖石*へ通ううちに、『原村っていいじゃん』となってここに住みたくなりました」(奥様)
*尖石(とがりいし)遺跡:長野県茅野市にある約5,000年前の縄文遺跡。日本を代表する縄文遺跡で、国指定の特別史跡。
もともと奥様は山梨・長野一帯から出土した土偶や縄文遺跡をめぐるのが好きで、専用の御朱印帳にスタンプを集め、ほぼコンプリートするほど。遺跡マップには、手描きのメモがぎっしり。

手書きメモがぎっしりの縄文遺跡めぐりマップ
実際、山梨・長野にまたがる八ヶ岳山麓エリアは、約5,000年前(縄文中期〜後期ごろ)に日本列島で最も人口が密集した地域。狩猟採取の鍵となった黒曜石がこの地域で豊富に産出し、その交易を通じて各地の縄文文化が交差した場所です。
「縄文のビーナス(国宝、棚畑遺跡)」「仮面の女神(国宝、中ッ原遺跡)」「仮面立脚土偶(後田遺跡)」など芸術性の高い土偶が数多く出土する一帯は「星降る中部高地の縄文世界」として、日本遺産にも認定されています。
イラストレーターとしての感性が、この地の文化の気配に引き寄せられた、ということでしょうか。

縄文のビーナス 出典:Wikimedia茅野市尖石縄文考古館展示。撮影Saigen Jiro。
庭に出れば、それだけで楽しい
二人とも東京生まれ、東京育ち。都会の魅力も便利さもよく知ったうえで、それでもここでの暮らしを選びました。

今、中心にあるのは「庭」だといいます。広いお庭、針葉樹と広葉樹からなる雑木林も敷地内にあります。庭木のうち、大木は地元のプロに、細い木は自分で切って乾かして薪にしているそうです。
「自分で割った木なので、愛着が沸くんですよね。ちゃんと使おうって。だから、光熱費はタダみたいなものです」(ご主人)

切り拓いた場所の一部は菜園となり、ケール、アスパラ、赤大根、ミニトマト、枝豆、オクラ、エゴマ、ゴボウ、長芋と10種類以上の野菜が育ちます。
「寒いからなかなか育たないんですけどね。でも、いろいろ試してみて、いずれは食卓の半分を自給できたらいいな」(奥様)
「水と空気がおいしいって、よく言うけど、それってすごいことなんだな、って」(ご主人)

「東京だと、ランチや夕飯をどこで食べようかって、予定を詰め込んで楽しむ感じでした。こっちは、ただ庭の土をほじっているだけで一日あっという間。庭に出れば、それだけで楽しいんです」(奥様)
「忙しい、の種類が変わるんですよね。季節の仕事がいっぱいあって、大変なんですけど、東京では味わえない充実感があります。疲労感も(笑)。夕方には疲れ切って、お酒を飲む余裕がなくなりました」(ご主人)
「残したいものは何か」「どんな暮らしを実現したいか」。お二人がそこにじっくり向き合ったから、思い描いたリフォームと、思い描いていた暮らしが実現しました。
Aさんご夫妻、お話をお聞かせいただき、ありがとうございました。






